最近、久しぶりに美術館へ足を運んだ。
群馬県立近代美術館。
展示は、
「もうひとつの場所 - 野又 穫のランドスケープ」
を目当てに。
お盆前に幕を閉じた清里での舞台製作の帰り道に寄り道出来ないかなぁなんて考えていたけど、それは叶いませんでした。
で、今回時間が出来たのと、自分が良い刺激を欲していた所、日を改め、心して行って参りました!
だいぶ前ですが、どこかの記事で野又さんの事を知り、そのときからとても気になっていたから…
そして今回こちらの美術館で展覧会がある事を知り、念願かなって原画を観る事が出来たわけです。
野又さんは想像上の建築物とそれを囲む風景を画面に表現します。
…とても人気のある作家さんでいらっしゃるということで、自分のような者があれこれ書くわけにもいかないかと思いましたが、自分なりの興味に従って鑑賞した感想を書かせて頂くことにしました。
どうかお付き合い下さい。
— それでは、
何が “ 気になる ” のかというと… 絵画に表されている建物や風景の創造・発想の原点。
それと、なぜ架空の建造物を描き、絵画にまで高めているのか?・・・
前者は自分が舞台美術制作に関わる一人としてのある視点からの興味。
後者は・・・自分で自分の首を絞めるような疑問だな・・・だ、だれか一緒に飲みませんか?笑
・・・この答えを求めるのは難しい。
だけど、実作品を見る前に数点を写真で見た際に、ある画家の考えと、もしかしたら近いのかも・・なんて勝手に思ったりしていて…
・・・えー、やっぱりここでの話しは一つ目の興味の方に絞ることにしますっ。
舞台美術、とくに自分のように背景を扱っている身としては、絵画制作をするにしてもそれをデザインする場合においてもとにかく気になるのは舞台装置構成の発想力や、装置や背景画が作り出す、舞台空間を一画面とする構図の取り方、組み立て方・・・等といったところかな。
あれ?・・やっぱり話し相手が必要か?・・・
・・ともあれ野又さんの作品の“発想の源”を一番の興味として会場に入りました。
すると、会場の第一室には早速その答えに迫るか?というような “ メモ ” や数多くの “ スケッチ ”、それに “ 習作 ” 等が展示されていて、早くも来た甲斐アリ! と一人高ぶって・・・
− 美術展の帰りはぐったりしている −
というのが、自分が望む美術展鑑賞後。
全く疲れなかったという場合は…残念ながら個人的には×だったってこと。
・・・展覧会場に一歩踏み入れたとたん、早くも集中モードに。
“ぐったり”の予感が…
スケッチや写真資料など、食い入るように見て…
ノートに書かれたメモは・・・残念ながら浅学な自分には理解し難い哲学的なフレーズばかりが・・・
でも・・・戯曲もそうだろうけど、あるワンフレーズって人それぞれ、千差万別の世界を想像させる力があるわけで、野又さんのメモ一言一言はそれらを書き留めた時点で何らかの世界を脳裏に創造させていったはず・・・なんて考えながら拝見しました。
というよりノートに関してはそれが精一杯…。
初期作品や習作を観ていて浮かんでくる芸術家は・・エッシャーやマグリッド・・でもこれはあくまで表面上の印象ですよ。
スケッチ等から受ける作品へのアプローチは全く異なるようです。
・・・直線、曲線を組み合わせたり、形や視点の移り変わりを模索しているような・・・
スナップ写真も、みな興味深い構図のもの、街中で撮られたありふれた光景だけど目をこらすとたちまち不思議空間だなーと気付かされるもの・・・観点が実に面白いですね。
自分も仕事柄、人が見過ごすような所ばかり観察しているのですが、野又ビューはこういう世界なのかぁと内心ニヤニヤしながら見て回り、すでに半分は満足していたような…
そして、第二室は作品がずらりと並んでいて…
野又さんの作品達はこの展示室を、とても静かで穏やかな空間にしていました。
絵画の力ですね。
この近代建築の美術館内の雰囲気とも溶け合ってその印象はより一層強いものに。
とても静か・・・というのは決して静止しているわけではない、という意味合いで…
どの作品も丹念に描き込まれていて、それが、間違えばカターイ表情の画面を作りかねないと思うのですが、作品の多くはゆーっくりとした時間の経過を感じさせてくれたり、描かれていない“何か”の存在を想像させてくれたり・・・こちらの視点の移り変わりを試されているような気も・・・とても不思議な魅力のある絵画たちだなーと。
これはポストカードですが、作風の参考まで。
最後の部屋は…最近の取り組みなのか、光(ネオン?)の配置によって建造物を表したりと、過去のものに比べるとより抽象的なアプローチ?ともとれる画風に変化したのでは?
で、最後の最後にもう一度第一室目に戻って資料を再確認してより理解を深め(たつもり…?)
てから出口へ。
・・・やっぱりじっくりとみるには一日必要だね。
他にも常設展や、最初の写真の垂れ幕にもある、群馬青年ビエンナーレ2010も観たりしてホントに“ぐったり”と(外の西陽にもとどめを刺され…)なったけど、とても充実した時間を過ごしました。
ちなみにこちらのお馬の彫刻さんは、あのロダンの工房にもいたという、
エミール=アントワーヌ・ブールデル
によるものだそうです。
この美術館のエントランス傍で出迎えてくれています。
すごい迫力!
・・ということで、最近の自分の脳内には、野又さんやここで目にした作品達がぐるぐると回って飛んでいます。
● 絵描きらしく
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