2009年6月25日木曜日

野外バレエ - 劇場公演との違いって?其の① ~20th Kiyosato Field Ballet~


僕は数日後に現地入りをしてこの舞台の美術制作を始めますがその前に…

この公演は多くの点で劇場での公演と異なる。

ということで、こんな観点でフィールドバレエをご紹介します。
第19回のフィールド(清里の皆さん?はこう呼ぶ)への制作参加から自分なりの観点、感想を交えて述べてみよう。





まずはなんと言っても “野外” での公演。そこは清里高原、山の中。
となれば舞台上も、そして客席も当然、屋根・天井はない。
舞台美術の観点から言うと、背景は星空であったり照明によって浮かび上がる自然の木立がメインの装置だ。

で、当然気になるのが天候だ。しかも山!
公演時間に雨が降っていればバレエダンサーは勿論踊れない。

お客さんも雨の中な訳でどこかへ避難しなければならなくなる。

しかもリノリウムがしかれたステージの上。少しでも濡れているとダンサーはすぐさま転倒してしまうのだ。
裏方の人々は、雨が少しでも止みそうならみんなで一斉にステージ上にたまったみずを掻き出し、そして素早く丁寧にタオルで拭き上げる。雨が上がるのを信じて…そしてお客さんに最高のバレエパフォーマンスを観て楽しんでほしいから。

しかし僕が感動した事の一つはそのお客さん達の行動だ。
こちら舞台サイドは雨が降れば逃げ場所がある(その逃げ場所でも雨水と闘わなければならないけど・・)。お客さん達も避難しなければならないはず、だが…
19回公演の初日だったと思うんだけど、公演直前に豪雨と落雷があった。
しかし、
お客さん達は帰ろうとせずにひたすら自分たちの席で雨が止むのを待っていた。
その後、広場に川を作るほどの降雨量になり、さすがに避難をしたようだった。
が、それにしても長時間そこで耐え忍んでいた姿が今も忘れられない。

きっとその人々はこの野外バレエの最大の魅力を知っているからなのであろう。
雨天時のでの出来事を書いたが、公演が無事行われると(第19回公演では雨で中止になった公演は長期公演中なんと1回きり!)このバレエは毎夜違った表情を見せる。
満天の星空の下だったり、途中から霧が架かってきたり…そして霧が出れば舞台照明にも変化が起こる。そんな自然の条件が、えも言われない舞台美術を創り出す。そしてそこに
バレエシャンブルウエストの素晴らしいパフォーマンスが加わりみなさんは夢のようなひとときを過ごすことになる。

そのほかにも今回第20回にもなるその歴史の中では様々なシーンを残してきたようだ。

どんな舞台になるかはこの清里の自然のマジックによりだれも想像が付かない。
一回一回がとても貴重な舞台となる。


きっとここに来るお客さん達はその魅力を知っているはずだ。そして初めて観た人はその虜になり、また違った表情のフィールドバレエを観たくなるに違いない。


・・・とはいえ、観客の皆さん!
夏とは言ってもここは高原、山の中です。
公演に足を運ばれるときは十分な防寒対策をお忘れなく!ホントに。


野外バレエ - 劇場公演との違いって?其の①


2009年6月24日水曜日

20th 清里フィールドバレエ ~20th Kiyosato Field Ballet~

今日は宣伝します!

Kiyosato Field Ballet - 20th記念公演


毎夏山梨県・清里、萌木の村特設野外ステージにて、
バレエ シャンブルウエストの華麗なる舞踊で贈る

文字通り、

“野外” の バレエ公演です。




今回で20回目の記念公演になるその内容は・・


A-プログラム: くるみ割り人形
B-  〃  :    白鳥の湖
C-
  〃  :   タチヤーナ


の3演目を毎日入れ替わりで演じる

・・・というもの。





19thから関わらせて頂いているバレエ公演。
今回も美術スタッフで制作に参加しています。

先日このブログにアップしたデザイン制作の内容の話はこの舞台制作のもの。
そしてすでに萌木の村の広場では大工さんらにより実際に作業が始まっている…。

自分はどこまで伝えられるか分からないけど、この他では観られないスタイルの素敵な公演・舞台制作の様子をスタッフサイドからお伝えしようと思っています。





20th 清里フィールドバレエ ~20th Kiyosato Field Ballet~



Test!携帯メールから〜楽しい雰囲気のカフェレストランに立ち寄る〜

たまたま食事時に走っていた通りで発見!


テラスで皆さん楽しそうに食事してるじゃないか。
ここは味見しておかなければならぬ。ということで寄ってみたのは、

天気予報では毎年最高気温で話題の熊谷市(もちろんそれだけではないが‥)にある


PUBLIC DINER


というお店。

久しぶりにこの通りを通ってみたところ。
このような楽しそうなお店ができているとはね〜‥。


食事しましたよ。
食べたのはビーフカレーでしたが‥
柔らかビーフがごろごろ入っていまして…カレー自体も美味しかった!
でも‥折角なのにカレーではあまりいいレポートにはならないかな?


家からは少し遠く車が必要、飲んで帰れないのが残念。

とはいえ、すごく活気のあるお店でまた行きたいなと思いました!

2009年6月23日火曜日

4/18(土) 晴 "~Henley on Thames, Wallingford, Pangbourne" - イングランド・舞台美術 探訪

イングランドのお話、続きます。


おはようございます。窓の外は明るい。今日はいい天気でスタートのようだ。
昨晩はアルコールも入っていたのと、ここに慣れてきたのとでよく眠れたようだ。

シャワーを浴びて出掛ける準備しなきゃ。


今日はきっと忙しいぞ。Jが僕を連れ回してくれるようだ。うれしいねー、楽しみだよ。



適当に朝食を頂き、たまった洗濯ものを洗濯機(旅先では本当に助かりました)で洗う。
今これからヘクター(犬くんの事ね)と一緒に散歩をしに行こうというからその間には洗い終わるだろう。



散歩。 非常に地元密着型?の行為だが、こういうのも求めていたものの一つだ。
何が見られるか楽しみ。


さぁ、ヘクター行こう!


少し歩くとまたまた可愛らしい家が建ち並んでいた。
カメラに撮りたかったけど、Jもいるしあまりパシャパシャやって迷惑掛けたくなかったから残念だけど写真は無し。

…ある角をを曲がると小道に入った。

Foot Path

公共の小径と言えばいいのかな? たとえば広い牧草地を横切るのにこのフットパスを使う。
ていうかこれはあるのが必然だと思う。土地がひろいんだからさ、プライベートエリアとパブリックはうまく共存しなきゃ。

そうこうして入っていくのは“ビーチ”の木、の林だ。Jの後をついて行こう。




このビーチの木、みんな背が高いけどバランスが面白いね。
林の木の枝は日がよく当たるてっぺんの方に向かって伸びるのは分かるけど、根本と高いところの枝の比率が日本人の意識からすると少し極端な気がする。
上の方の枝はまず本数が多いというか枝振りが混み合っている。毛細血管のようだ。
そしてグニャグニャした印象が強い。他の場所で目にする違う種類の木もそんな印象だな。

写真じゃ分かりづらいけど日本とは明らかに景色が違った。だから空気も違う感じ。
説明できないのが悔しいけど、この時受けた感覚はすごく大事だ。
舞台美術の話になるけど、背景画(ドロップ)で森の中や、それともただ'木'を描く場合、やっぱり日本国内で目にする木立のイメージで描いてしまう。
当然そうなるよね。だって身近で、しかも幼いときから見慣れているものだから。
だから西洋の人が描く木立は不思議な感じを受けていた。どこか受け入れがたいものがあるんだな。身体が反応してしまうんだ。
実際に海外から来たドロップ(森の絵)を見たときにも感じた事がある。この木、描き方面白いなーって。でもそうじゃないんだよね、本当に違うんだよ。頭ではわかっていたさ。だけどここで目の当たりにして確信したよ。

次からは誰にでも自信を持って言えるね。“本当にこういう景色なんだよ”って。
自分の絵も変わる?・・・でもこれで風景を描くときにためらいが出るかも。描画に思い切りが無くなってしまったりして…。

・・いやちがうよね。乗り越えよう!そしてこの景色も自分のものにしていこう!



あー、かなり独り言のようになってしまった。
読み辛いかもしれませんが、なんとなく僕のオタク的興奮が伝わって頂けたら幸いです。笑



そしてまたここイギリスで逐一思うけど、


・・・本当に来てよかったな!




— ヘクタ—との散歩は続く。


続いてJが教えてくれたのはこの植物。

Holly



柊だよな、これ? …でも見たこと無いほどの茂り方で、茎も太くて長い!
まるで緑色の鉄条網だ。そんな背の高さ以上もある柊の固まりがこの林中に広がっている。
なんだか少し気味が悪いくらい…、そんな中をくぐり抜けて進んだ。


Holly の 森 だ。 だから友達に質問してみた。
アメリカのハリウッドはどういう意味があるのかな?と。

“おもしろいね”と言われただけだったがどうなんだろう…?

実際に今調べてみるとやっぱり思った通りそのままで、その丘に自生するカリフォルニアホリーという種の柊が由来のようだ。でもって英と米では発音が違うんだろうね、読み方がホリーかハリーに分かれるところだと思う。でも日本では“ハリー”ウッドだよね。


…散歩に戻ろう。


更に進むと…よりいっそう深く、暗くなってきた。
そして日本の林などとはやっぱり空気感が違う。
写真の様に遠くが白い。特に霧がかかっている訳ではなく、自然にそう見えているんだ。

本当に魔女でも出てきそうだね。

細かい枝振りのせいなんだろうなーなんてまじめに考えながらも、ちょっと怖いです。










左下隅を歩くのはJとヘクタ—。




そしてこの森を抜けるとぉ…

























すーげー!!!

なんだこの風景は!!

誰かがそこに模型作って、そして置いた — みたいだよね。丘とか点在する家や木々とか…。

経験のない広大さを目の前にただただ驚いてしまった。

この地に立ってしっかりと自分の目で見ているから分かるこの感じ!
スケッチをしたいとかそう言う次元ではなかった。
もちろん舞台美術の一制作者としてこういう風景を見られることを期待してここイングランドへ来ている訳だが、どうして良いか分からない自分が居たんだよね。
嬉しいのやら、逆に当惑してしまうやら…全部含んで…


…しあわせだー!!


昨日までの天候で遠くはかすんでしまっているが、晴れている日にこれを目の当たりのしたら自分はどうなっていただろうか!?

丘という言葉、存在は知っていてもこのスケールで見たことがないというか…。
今まで丘という言葉を大したイメージを持たずに使っていたことがよく分かった。
そりゃ歌にもなるよね。♪おかーをこーえーゆこーおよ〜  …牧場ばっかりだけどね。

そう!ほんとに牧場としての丘ばかり!! 山がない!

今立っているここも丘の上(中腹?)だが、遠くを見てもおか、オカ、丘…だ。

どうしよう…さっきも書いたけど、次に風景のバックドロップ(舞台の背景画ね)を制作するときは…、
これ見ちゃったからきっといろんな事考えちゃうんだろうなぁ。


でもこれで大きなやり甲斐が出たぞ! 挑戦、挑戦っ!!


ここで折り返して戻ろう。


良いものを見させて貰ったんだけどショックが大きくて思考回路がついて行かない。
帰る道中はあまり思い出せないな。
さっきの光景をなんとか頭に焼き付けておこうとするんだけど…全部は無理。
第一印象を大切にしておこう。それがせいいっぱいの努力だ。
あー…地球は…すごいね。



フットパスから元の道へ戻り、次に向かう先は…この町のChapelです。
これは僕のリクエストだ。Jにあらかじめ伝えてあったからね。


朝から目白押しだな今日は…。願ってもないことだけど…もう一つ身体が欲しい。




さて、教会なら日本でもあるけど、僕の興味は勿論その建築。
特に大小の教会問わずにその内部を見てみたい。






行ってみよう。よろしくJ!


この町 "WOODCOTE" の教会だ。





















とても綺麗に手入れのされている印象。
建物は小さくてもとても落ち着いた雰囲気だね。

写真集などではなかなか見られないような非常にローカルな教会を見ることが出来た。

中へ入ろう。

…静かにドアを開けて薄暗い室内へ緊張しながら一歩…。

普段宗教のことを強く意識しないけど、ここは基本的にクリスチャンが訪れる訳で、僕は言ってみればエイリアン、さすがに色んな意味で意識せざるを得ない。

内部ではシャッターは切れないな。よーく見て、そして感じておこう。

興味を惹くものがそこかしこにある。

Jに色々質問したり教えて貰ったりして、どの教会にも共通して備え付けてあるものを知ることが出来た。(この後の旅程でもいくつか連れて行って貰ったのでまた追記したい)



で、僕の最大の関心事である建築に関してなんだけど、特筆すべきは外壁の石!


上の写真で見られるけど、壁の大部分を覆う石が分かるかな?

Jの家に来る前に立ち寄ったReadingにある教会でも見かけたあの石壁と同じだ!
そしてGoring & Streatly 駅周辺の家々でも使われているのを見たぞ。
ここは是非彼に訊かなければ!

その石の名は

"フリントストーン"

だって。 
  …で、何でこの石が汎用されているのかというと、

とても頑丈。そして環境に対して変化しない、風化しないということのようだ。
言うことはもっともだ。外壁にはもってこいの素材な訳だね。

そのうえ見た目も面白い。アップの写真はないかな?…あった。Readingで撮ったものだ。
この写真だと右側に見える黒い石



面白いでしょ?

なんだか海の中にありそうな感じのする表面を持っている。
だからといってごつごつ・ざらざらはしていない。
所々窪んでいるけどとても滑らかな表面だ。




これを書きながらflintの意味を調べてみたよ。

“火打ち石,火打ちの道具”とか“(ライターの)石,発火石”…ほか“堅いことから無頓着・冷酷の象徴”なんてのもあった。


この地域は、イギリスに関心のある人、イギリス好き、の多くが知っていると思うコッツウォルズ地方に近いようだが、その地方で見られる建物の様子と大分違う。
写真などで見る限り、コッツウォルズの代表的なお家のイメージは蜂蜜色。壁の色が黄色っぽいのだ。(Jが言っていたけれど、英語では "gold" と表現するらしい)
でもここら辺のは黒っぽい外壁に赤い屋根が特徴。

どうしてだろうか?

使われている石材が違うのは見れば分かるけど…。

これは質問しなかったな。後で調べなきゃ。






》》》つづく。更新をお楽しみに…。

2009年6月10日水曜日

舞台美術 : デザイン制作始まる


先日よりスタートしたある舞台制作。


今回はセットのあるパートをデザインすることに。
そして後には自らが自分のデザインを基にペイントもします。


ネタバレにならぬよう、画像はこれだけね。



これは単にデザイン画の下絵のほんの一部だから、色やもちろん全体像なんかは想像付かないと思うけど、
これどの部分だろう?なんて実際にその公演を観に来て頂いて探して欲しいな。笑


舞台美術 : デザイン制作始まる

2009年6月6日土曜日

舞台セット_ジャングルのイメージ

ここんとこイギリス話ばっかりだから、たまには舞台美術のお仕事の方も紹介しよう。




今回の画像のものは、“ よごし ” というか “ 着彩 ” と言おうか。
直接背景画に当たるものではないけれど背景の役割を果たすもの。舞台セットの一部だね。

数人で、ある生地をグレーに近いグリーン系の色でひたすら染めた。
それを別の場所で加工していただき、全部吊ってある。

“ ジャングル ” のイメージデザインだったようだ。

そしてまたこの写真の現場でデザイナーさんの指示をもとに、スプレーガンや、もちろんアクセントには刷毛を使って色調整。

写真はその一部。カメラを持って行き忘れたから携帯カメラの画像でわかりにくいけど、ここで全体を見るとかなり鬱そうとした感じ。

でも、どの道具でもそうだけど、劇場に持って行くとそのスケール感や色の調子などがかなり違って見える。もちろん照明の効果も影響するし。
ここでは立派な道具に見えても、すごくつまらなく見えたりするときもある。
どの舞台美術でもそうだけど、大胆さが必要、といつも肝に銘じてやってます(もちろんケースバイケースだけどね)。
…これは本番ではどうみえたかなぁ?


*舞台セット—ジャングルのイメージ